伊勢新聞

2017年5月30日(火)

▼志摩市と鳥羽市のふるさと納税寄付返礼品で人気トップの宿泊券が、総務省が自粛を求める商品券に当たるか否かで両市の対応が分かれた。志摩市は「商品券に当たる」として廃止し、鳥羽市「当たらない」と継続の方針

▼ふるさと納税寄付金を運営する市観光協会が「総務省の通知に強制力はなく、全国的に返礼率が高いものがまだまだある。ルールを守った方が損をするような現状では変わらない」。自分ばかりじゃないとことだろう

▼宿泊券が商品券に属するかどうかは知らないが、図書券などと同様、金券には違いない。公平・公正を基本とする行政体が「正直者は損をする」ことを認めるような発言をしては、真面目に税金を払おうという市民はいなくなってしまわないか

▼「地方版総合戦略」で、福岡市と博多市の異なる対応を比較し「地方のアイデアに予算をつける仕組み。アイデアが出てくる自治体と出ない自治体では当然差が出てくる」と語ったのは麻生太郎財務相。地方間競争はもはや当然の時代になった。名目はともあれ、仕組みはもっとも公平・公正であるべき税に自治体間争奪戦を導入した。燃え盛ってからコントロールしようとしても遅かろう

▼総務省が自粛を求める家電製品にしても、地場産業とそれ以外では違ってくる。観光客誘致が基幹産業でもある鳥羽・志摩にしても、宿泊券は地元振興の切り札で、地元と無関係な高額な返礼品競争と同一視はできない

▼なりふり構わぬ財源探しは国、地方共通。そんな醜悪な現象を、返礼品競争ははっきり見せてくれているとは言えるかもしれない。