サミット1年・成果と課題 恒常的なテロ対策へ 警備の教訓、次に生かす

【小型無人機(ドローン)の飛行訓練をする警備関係者(県警提供)】

主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)では、首脳陣や会場周辺の警備に併せて、直前に震災被害を受けた熊本を除く全国都道府県警から応援が寄せられた。警備規模は、愛知・三重両県で約二万三千人、県内だけでも約一万六千人体制となり、国内での前開催地・北海道洞爺湖を上回る県史上最大規模の体制となった。

重点的なキーワードの一つが「ソフトターゲット対策」。常に警備体制が敷かれているとは限らない不特定多数の集客施設をテロから守るためには、警察だけでなく民間の目も不可欠だった。

県警は平成二十七年十月、官民一体でテロ対策を協議する「テロ対策三重パートナーシップ推進会議」を設立。官公庁をはじめ各種インフラや交通運輸関係者など四十四機関が参加した「本部版」と、県内十八署単位で設立した「地域版」をスタートさせ、研修会や延べ三百回以上の訓練を重ねてきた。

同推進会議の趣旨は「恒常的なテロ対策」にある。サミット閉幕後も活動を停止せず、定期的に訓練や有識者を招いた研修会を開催してきた。

今月三十日に津市内で予定している第二回定例会では、「みんなの目 テロにまけないストッパー」を語呂合わせした標語にちなみ「みテますキープ制度」を始める。半年に一度、参加機関をモデル事業所に指定し、支援して警備強化を促す。県警警備企画課の川口克彦次長は「今後もインターハイや国体など重要行事は続く。得た教訓や経験を次に生かせれば」と期待する。

サミット警備には数多くの最新機器が導入された。特に小型無人機(ドローン)は人が足を踏み入れにくい山林や河川での災害救援支援に活用できる可能性があり、県警では昨年秋頃から操縦士の育成に乗り出している。現時点ではまだ出動実績はないが、担当者は「手探りの状態だが、今後、状況を見極めていきたい」と話す。

主会場の志摩市を管轄する鳥羽署長を務めた伊藤達彦交通部首席参事官は、「地域住民が警備に理解、協力してくれたことが大きな成果」と振り返る。

同署管内の昨年五月の刑法犯認知件数は前年比半減の三十二件、年間でも百十七件減の二百六十件と大きく減少し、交通事故も人身事故に限れば五月で八件(前年比十三件減)、年間で百五十七件(同九十一件減)と大きな改善が見られた。伊藤首席参事官は「地域住民一体となった『地域力』、またそのための協力体制を築けたことが成功の一因だったのでは」と分析した。

英国マンチェスターのコンサート会場で多数の死傷者を出した自爆テロ事件が先日発生するなど、国際的なテロ情勢は依然厳しい状況にある。県警本部の難波健太本部長は二十五日の定例会見でサミット一年を振り返り、「社会の安全性を確保するためには一定レベルの警戒心を持ってもらうことが重要。平時での取り組みを進めたい」と話した。