伊勢新聞

2017年5月26日(金)

▼精神神経系疾患で休職する教職員が二年連続増。十年間で最多となったのに、県教委はその理由について「分からない」「明確に回答できない」

▼昨今の勤務状況は「非常に超過している」と市議会で答弁したのは名張市の教育長。その延長戦で自殺者が県全体で年二十―三十人。「もちろん県教委も把握している」と続けたので県教委に聞くと「原因は調べていないし、調べるつもりもない」。対策は何も考えていないということだろう

▼にもかかわらず「職場復帰の支援に努めたい」と恐ろしいことを言う。名張市で平成二十四年、休職三カ月と診断された校長は入院を拒んだ。責任感が強かったが、三カ月の校長不在という事態が自分をどんなに追い詰めるか、よく承知していたこともあろう。診断以前に、退職への不安を口にしていたこともあるという

▼市教委は「本人のため」の名目で医者と家族との話し合いの場に介入した。当然一層激しく入院を拒む校長を説得する形で「とりあえず一カ月」へ導いた。このやりとりで医者は一カ月がスムーズに職場復帰できる常識的期間と捉え「本人のため」と了解したという。校長は一カ月後に職場復帰して六日後自殺した

▼責任感が強く、一日も早い職場復帰を願う教師が、復帰直後再発、自殺した例は珍しくない。休職教職員増の理由も自殺の原因も分からぬ県教委が「職場復帰の支援」をしては、自殺の背中を押すことにもなりかねない

▼「休職者の時間外労働が特に多いという訳ではない」とも。うつの教職員を追い詰める言葉だなどとは思いもしないに違いない。