伊勢新聞

2017年5月25日(木)

▼あのNHKがと話題になったらしい。クローズアップ現代プラスの「『高齢者だってセックス』言えない〝性の悩み〟」である。男女の性格差から風俗店やアダルトサイトを利用する高齢者を紹介し、ジャーナリストの田原総一朗さんが風俗店の内容を問い、性科学者の宋美玄さんが答える。本番は論外だが「主に手と口によるサービス」

▼老人と性は、施設などでのトラブルの隠れた一因だとかつて県議会でも取り上げられた。古くて新しい問題だが、それとは別に風俗店のチラシを印刷し売春防止法違反ほう助罪で有罪判決を受けた昭和六十一年の事件を思い出した

▼東京・新宿歌舞伎町で水商売や警察官はじめ町の住民を顧客にしていた印刷業者が、同業者からのたっての依頼で受けたチラシで従犯対象の「ほう助罪」に問われた。正犯である依頼主との関係が希薄な上、チラシが売春あっせんを意味しているかどうか知りようもないのは宋さんの解説の通り

▼初代の放送倫理・番組向上機構理事長清水英夫編著の支援記録に、印刷業者逮捕は戦前の治安維持法下でもなかったとある。普通の一般人が日常生活をしていてある日突然、警察、検察、司法のストーリーで罪人とされるほう助罪の危うさを小野慶二元判事が説く

▼「共謀罪」の衆院通過で通信傍受の拡大論が浮上しているという。当然だろう。法案が成立するとどう適用されるかは現在の法の運用の中にある

▼NHKは冒頭の番組のネット配信を「都合によりとりやめ」と告知した。「ほう助罪で引っ張るぞ」との警告が親切な人から入ったのかもしれない。