伊勢新聞

サミット1年・成果と課題 記念館が最後の事業 効果持続できるか

【26日にオープンするサミット記念館。県民会議にとっては事実上、最後の事業となる=志摩市の賢島駅で】

官民一体でサミットの開催支援に当たった伊勢志摩サミット県民会議は、サミット開催後も記録誌の発行やサミット県民宣言の作成などに努めてきた。サミットから一年後の今月二十六日には、賢島駅(志摩市)の二階にサミット記念館を設ける。

総額約一億円をかけてフロアを整備。首脳会議で使われた尾鷲ヒノキのテーブルや椅子をはじめ、各国首脳のサインなどを並べる。サミットが県内で開かれたことを「次世代に伝える」のが目的。県民会議が掲げる「四本柱」の一つだ。

記念館は事実上、県民会議にとって最後の事業となる。記念館のオープン後は賢島駅の階段に昇降機を設置する事業を残すが、それも年内には終了する見込み。基金の精算や所有物の譲渡など、必要な手続きを済ませた後に解散する見通しという。

県民会議の事務局を担う県国際戦略課の職員は「県民会議はそもそも、サミットの開催支援が設立の主な目的だった。県民会議の解散後は県のほかに、市町や各界の団体などがポストサミットの取り組みをそれぞれで進めてもらえるようにしたい」と話す。

ただ、県は次に国内で開かれるサミットの開催地が決まるまでをポストサミット期間と位置付け、その間はサミット効果を維持させるという長期的なビジョンを描く。サミット後の盛り上がりを見据える中で、官民一体の大規模な組織が解散することになる。

洞爺湖サミットが開かれた北海道ではサミット閉幕の三カ月後、官民でつくる「サミットの成果を未来につなげる道民会議」を設立。「MICE」と呼ばれる大規模な国際会議の誘致を主な目的に位置付け、誘致に特化した推進会議も設けた。

会議のメンバーが誘致活動に努めた成果は目に見える形で現れた。サミット五カ月後には、主要八カ国などによる「G8水と衛生に関する専門家会合」を開催。東南アジア諸国連合(ASEAN)の次官級交通政策会合やAPECの貿易担当大臣会合も誘致した。

県でもMICE誘致を重要な取り組みに位置付け、誘致に特化したパンフレットの作成や開催を支援する補助金の周知に努めている。国際戦略課の職員も東京に出向いて省庁を訪問している。年度内には誘致の業務を旅行代理店に委託する予定だ。

現状では、ポストサミットの取り組みが十分にMICEの誘致に結び付いているとは言えない。全国では昨年中に二千八百件のMICEが開かれたが、県内は十七件にとどまる。半数以上は三重大学関連で、県外の主催者が県内で開いたMICEは二件程度だ。

それでも県は道のように誘致の専門組織を立ち上げる予定はない。県観光局の生川哲也MICE誘致推進監は「民間を巻き込むというより、まだ県が誘致の準備を進めている段階。要望活動ではサミット効果を感じる場面も多い。成果につなげたい」と話す。